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【マンガ】岳
岳 みんなの山
先日、BLUE GIANTを読んだことを書いたばかりだが、作者の石塚真一さんがBLUE GIANTの前に書いた「岳」というマンガを一気に読み切った。
10年近く前に映画化されている本作は、山の雄大さ、荘厳さ、素晴らしさを描くと同時に、山の恐さを描く作品でもある。
本作は北アルプスで救助のボランティアを行う青年、島崎三歩の物語。
1話1話オムニバス形式ながら、その1つ1つのストーリーに感動や悲哀が込められていて作者のストーリーテラーとしての能力の高さに舌を巻く。
どの名作にも言えることだが、「岳」も例にもれず登場人物一人ひとりのキャラクターが魅力的に描かれていて感情移入せずに読み進められない。
そして、この作品の一番のポイントは「命」が大きなテーマとして描かれているところだと思う。
「命」
時々ニュースで登山者が遭難にあって行方不明になったり、死亡して発見されたりするのを耳にするが、そういった不慮の事故がリアリティをもって描かれており、「命」とは何なのか?「生きる」とは何なのか?と考えさせられる。
東京に住んでいる私には絶対に感じることのできない、何か特別な感情を、山に生きている人達は感じているのだろう。
「死」というものを都会人よりもかなりリアルに感じている彼ら(マンガに登場する三歩たち)は、「生」に対する想いや感覚もきっと違うと思う。
このマンガを読んだことで、山に登ってみたいという感情よりも、むしろ山は怖いものだ、という印象の方が今は強く残っているのが正直なところだ。
その一方で、登山という行為が時には命を失うことになるかもしれないリスクを抱えながらそれでも辞められないという、それほど魅力的なものであるということに神秘的なものも感じてしまう。
汗水流し息を切らしながら懸命に登った山の頂上には、写真には写らないきっと何か特別な景色があるのだと思う。
このマンガが高く評価されている1つの要因として、山の良い面だけでなく、時には悲しい現実が待っていることを読者にリアルに伝えた点だと思う。
ちなみにこのマンガは第1回マンガ大賞受賞というお墨付きなので、ぜひ読んでみて欲しい。
山の事故
このマンガを読んだ後に気になった記事があったので紹介しておく。
こういったことを知ると、安易にテレビでタレントにエベレスト登頂等の企画をやらせるべきではないだろうと思う。
本人たちがどれだけい周到に準備して挑戦したとしても、そのプロセスがちゃんと放送されず、万が一登山を安易に捉えられてしまったとしたら、その影響は決して軽いものではないだろう。