私は長い間、いつも「ここが自分の居場所じゃない」「これは本当にやりたいことじゃない」という思いを抱えて生きてきました。
これは別に特別なことではなく、誰でも人生の中で一度や二度は思い悩むことだと思います。
ただ、大人になるにつれ多くの人がそういった現実に折り合いをつけながらうまく生きていくのに対し、私は歳をとる程そんな思いをこじらせるようになり、ついには大きな壁にぶち当たり身動きが取れなくなるようになりました。
そこまで行ってようやく「このままじゃダメだ!」と感じ、新しい進路を選択できるようになりました。
そんな紆余曲折を得てわかったことは、大事なことは「やりたいことかどうか」ではなく「場所」だった、ということです。
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現在に至るまでの経緯
簡単にこれまでのいきさつをお話せてください。
頼まれてもいないのに自分語りをするほど痛々しいことはありませんが、これまでどういう思いで決断を下し、それがどう間違っていたのかをお伝えすることで役立てるものがあるのではないか、と思っているからです。
新卒時代
大学を卒業して入社したのは、東証1部上場の売上高1兆円を超える有名企業でした。
しかし、入社して間もなく、そして退社するまで、ずっと見えない敵と戦っているような日常でした。同期と一緒に過ごした時間など、思い出がないわけではありませんが、とにかくストレスを抱える日々でした。
そして、もともと音楽をやっていて音楽業を仕事にしたいという思いがあったこともあり、1年で会社を辞めました。家族や友人にも反対する人は多くいました。せっかく有名企業に入社できたのだから、周囲がそう思うのも無理はないなと、今では思うことができますが、当時はとにかくもう続けることが自分の中では難しくなっていました。
ただ、当時は「見えない敵」や「ストレス」にちゃんと向き合うことをしていませんでした。そういった問題よりはむしろ「音楽をやりたい」という気持ちの方を重視してしまっていたこと、若気の至りというのか、現実をしっかり見据えることをしていなかったと思います。
監査法人時代
その後、数年間音楽の道を進もうとしていましたが、その道の険しさをまざまざと知り、公認会計士の勉強を始めました。新卒時代を1年程度で辞めたこともあり、再就職はなかなか厳しいだろう、ということと、新卒時代の反省から専門性を生かした仕事をしようと思ったからです。
この時、新卒時代の「見えない敵」や「ストレス」にちゃんと向き合っていれば、もしかすると公認会計士の道は選ばなかったかもしれません。
その後、無事公認会計士試験に合格し、監査法人で仕事をし始めました。
繰り返しになりますが、そもそも会計士を目指したのは時代遅れの気合や根性論ではなく、頭を使った専門的な仕事をしたい、と思ったから、というのがあります。
そしてここから、公認会計士としての輝かしい人生が続くのかと思いきや、またしても壁にぶち当たります。
そのうちの1つが上司や部下との折衝です。
監査はチームで仕事をするため、チームメンバーの仕事が自分の仕事にも影響してきます。
上司が優秀で円滑に回るチームは良いのですが、その逆のパターンになるとなかなかツライものがありました。
そして数年も働くと、この人(実際には3,4人くらいしかいなのですが)と仕事をしているとツライな、という思いをたびたびするようになりました。
今思えばそれに加え、なんだかんだと社内・社外含めて交渉や調整などが多く、そのたび神経をすり減らしていたように思います。
監査法人時代の仕事っぷりは非常に評価してもらえていましたが、このままではダメだと思い、チームではなく個人で仕事を進められる税務に進もうと決意しました。
この時期が徐々に「見えない敵」や「ストレス」の正体に気づき始めた頃だと思います。
税理士法人時代
そして小規模な税理士法人に転職しました。
ここで個人で仕事ができる!無駄なコミュニケーションに神経をすり減らすこともない!
と思いましたが、結局半年もたたずに独立を決意しました。
それは仕事をする職場の環境が悪かった、というのが大きな要因です。
若手の職員数名が、所長からたびたび怒鳴られるようなことがあり、聞いているだけで大きなストレスでした。
私自身が怒られることは一度もありませんでしたが、それでも良い気はしません。
結果として、私自身のコミュニケーションで感じるストレスは軽減されましたが、環境からくるストレスが激増することとなり、この税理士法人も短期間で辞めることとなりました。
そして独立後の現在
そして独立し、今があります。
これまでのキャリアの中では圧倒的に快適で大きなストレスを抱えることもなく毎日を過ごせるようになりました。
ただし、全く不満がないわけではありません。
それは、上述した「見えない敵」や「ストレス」にしっかり向き合わなかったツケが回ってきたからだと思っています。
ここはすごく反省しているところです。
だから今でも良くない所はできるだけ改善し、より自分にあった仕事を選んでいけるように、自分が楽しんで仕事ができるように、と日々取り組んでいます。
仕事を通してわかったこと
結局私は周囲に対してだけでなく自分自身に対しても本音と建て前を使い分け、これまでの決断をしてきたことがわかります。
自分の気持ちに素直になるということができなかった、言い方を変えれば、自分の人生に対してわがままになることを非常に悪いことだと捉えていたため、そうやって本音と建て前を使い分けないことには次に進むことができませんでした。
私は過去のキャリア選択でこんな本音と建て前を使い分けてきました。
新卒時代
【建前】音楽をやりたくて仕事を辞めた。
【本音】それと同じくらい営業という仕事が嫌だった。そもそも人が多い環境が苦手だった。
監査法人時代
【建前】個人で活躍できる仕事をしたいから辞めた。
【本音】チームでの仕事が嫌だった。合わない上司と仕事をするのが嫌だった。ひいては、度重なる調整・交渉で神経をすり減らすのが嫌だった。
税理士法人時代
【建前】自分ひとりで独立してもできそうだから辞めた。
【本音】職場環境が悪いのが嫌だった。
最後に
今だからわかることですが、私はとにかく色々なことが気になってしまう気質であり、目や耳に入ってくる情報が多すぎると、それが刺激となりいつもどこか落ち着かない気持ちになっていました(のちにHSPであるということを知りました)。
ですが、環境が整うとめちゃくちゃ集中できます。
今はその力を生かして仕事をしていきたいなと思っています。
同じようなことを(心の中では本当は)思っている人がきっとまだまだ世の中には大勢いると思っています。
ただそれに気づけている人はまだまだ少ないとも思います。
私が偉そうに言うのはおこがましいですが、そういう人は、その「自分なりの答え」を探すことから始めて欲しいと思います。
仕事自体が嫌だ、働くのが嫌だ、と思っている人も、もしかしたらただ環境が合わないだけかもしれない。
自分の働きやすい環境で仕事をすればもっと仕事を楽しめるかもしれない。
本質的な理由を見失ったまま、すべてのやる気をなくしてしまうのはもったいない。
例えば、人と頻繁に接するのが嫌なのに無理して接客の仕事をする必要はないし、重労働が苦手ならデスクワークに切り替えればいい。
みんなと一緒に仕事をワイワイするのが好きなら、勢いのあるベンチャーなんかで仕事をするのもありだし、一人でもくもく作業をしたいなら在宅でできる仕事をすればいい。
こういう話をすると、「そんなの当たり前じゃん」と思う人もいるかもしれません。
ですが、決してそれは「当たり前」なんかじゃありません。
人は育ってきた環境の中で様々な思い込みを刷り込まれ、自分の心に正直なって物事を決断するということが難しい人も大勢います。
自分がそれに気づくまで10年以上かかりましたが、それでも気づけて良かったな、と思います。