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【書評】貯金40万円が株式投資で4億円

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【書評】貯金40万円が株式投資で4億円

貯金40万円が株式投資で4億円

 

まぁなんとも盛大なタイトルの本ですが、今回読んだのはこちら。

貯金40万円が株式投資で4億円

 

貯金40万円が4億円ということは1,000倍なわけですが、インパクトを残そうとするあまり、胡散臭さを醸し出してしまっている気がして、こういうタイトルは良くなんじゃないかと思わないでもないですが、読んでみて非常に良書だということがわかりました。

 

コロナを機に日本でもずいぶん投資がブームになったように思いますが、2020年はコロナとそれに対する影響でとりあえずIT系のハイグロース株に投資をしていれば誰でも儲かる状況でしたが、これからはそうはいかなくなるだろうと思われます。

 

投資信託の定期積立等で分散投資(銘柄及び時期の)ならいざ知らず、なんとなくの知識で個別株を買うことのリスクは2020年と比較すると肌感覚として高まってきているように感じます。

 

そんなときに出会ったのがこちらの本でした。

 

バリュー株投資

この本はズバリ「バリュー株投資」をテーマにしています。

バリュー株とは割安株とも言われ、ざっくり説明すると利益や純資産に対して株価が割安のまま放置されている株のことを言います。

本の中では、著書のかぶ1000さんの投資遍歴や詳細な投資スタイル、どういった指標を用いるか、会社四季報の活用方法等が詳細に述べられています。

 

私が本著を読んで感じたことは、バリュー株投資は会計を理解できている人ほど相性がよく長期継続して運用しやすい投資スタイルだな、と感じました。

 

以下では私が気になったところを中心に簡単に紹介・解説してみたいと思います。

 

株式市場はつねに行き過ぎる

コロナ禍こそバリュー株を始めるチャンス(P.45)とあります。

それは

株式市場はつねに行き過ぎるものですから、本来の企業価値よりはるかに安い価格まで株価が下落している銘柄もあります(P.45)

とあり、コロナによって多く銘柄が本来の企業価値よりもはるかに安くなっていて、投資を始めるタイミングとして絶好のタイミングであることを指摘しています。

これを書いている2021年3月時点では多くの銘柄で株価の回復が見て取れるものも多くなってきましたが、まだまだ低迷している株もありそうです。

 

また上記の株式市場はつねに行き過ぎるという表現が非常に気になりました。

かぶ1000さんは投資歴30年以上を有しており、こういった方がこのように断言されているのは非常に示唆に富んでいます。

当然、行き過ぎるというのは下方向にだけでなく、上方向にも同じことが言えるのでしょう。

 

ベンジャミン・グレアム「賢明なる投資家」

かぶ1000さんの投資スタイルのきっかけになった本も紹介されています。

ベンジャミン・グレアム「賢明なる投資家」という本で、ベンジャミン・グレアムはウォーレン・バフェットの師匠と言われているそう。

「賢明なる投資家」は1949年に出版された本だそうですが、時を経ても変わらない本質的な内容となっているようで、一読の価値がありそうです。

 

 

資産バリューと収益バリュー

一口にバリュー株投資といっても、大別すると資産バリュー株投資収益バリュー株投資に分かれます。

筆者はこのうちの前者、つまり「資産バリュー株投資」を自身のスタイルにされており、その理由として、収益は毎期変動し赤字になったり黒字になったりと不安定な動きをしやすいですが、資産は長年の企業活動によって積み上げてきたものであり、突然半分になったり消滅したりなんていうことが考えにくいから、と言います。

 

資産バリュー株投資を行うにあたって重要視している指標を筆者は単なるPBR(株価純資産倍率)ではなく、独自に修正を加えた「実質PBR」を算出し、指標として用いていると言います。

修正内容は、時価評価すべき資産があれば、簿価から時価に置き換えた上でPBRを算出する、というものです(映画や漫画で言うネタバレになってしまうので、詳細については本著でご確認ください)。

 

会社四季報や決算短信・有価証券報告書

実質PBRの算出や、会社への理解を深めるために、筆者は会社四季報や決算短信、有価証券報告書を通読していると言います。

専業投資家だからこそ、そこまできる、と言えそうですが、筆者はこういいます。

投資は人にお金を貸すのと同じ、その人のことを良く知らずにお金を貸せないのと同じで、大事なお金を投資するにはその会社のことをよく知らないと投資できない。

だからかぶ1000さんは会社のことをじっくり調べ、時には会社まで足を運び、情報を入手すると言います。

 

自分なりのスタイル

ここで大事なことは、筆者はそういった調査を楽しんでやっているということです。

本著を通じてたびたびこういった調査は苦ではなく、楽しいからやっている、ということに触れています。

 

楽しくなければ続かないというのは真理だと思います。

しっかり投資と向き合っていくことを考えているならば、自分なりの投資スタイルを築くことは不可欠だと思いますが、楽しく続けられる投資スタイルを見つけることだ大事だということを教えてくれている気がします。

 

そして、冒頭でも触れましたが、会計に明るく長期継続する投資手法を確立したいと考えている投資家にとって、本著は非常に優れた参考書となるでしょう。