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【書評】スマホ脳②
スマホ脳/Anders Hansen(アンデシュ・ハンセン)
今回は前回の続き。
前回は、人間の進化のプロセスを確認した。
今回はそれが現代社会にどのように機能しているのか確認したい。
今回は、第3章から第6章が中心となる。
第1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた
第2章 ストレス、恐怖、うつには役目がある
第3章 スマホは私たちの最新のドラッグである
第4章 集中力こそ現代社会の貴重品
第5章 スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響
第6章 SNS-現代最強の「インフルエンサー」
第7章 バカになっていく子供たち
第8章 運動というスマートな対抗策
第9章 脳はスマホに適応するのか?
第10章 おわりに
スマホはドラッグになっている
人類は、狩猟採集の暮らしの中で少しでも長く生き残るために進化してきた。
その進化の結果は、どうやら現代の社会の我々の暮らしとは相性が悪いらしい。
筆者は
スマホは私たちの最新のドラッグである(P.67)
という。
ドーパミンがキーワード
筆者がそのように述べる要因の1つが「ドーパミン」である。
これはどういうことか。
ドーパミンは報酬物質であり、私たちを元気にするものであると同時に、あるいは、それ以上に
何に集中するかを選択させること(P.70)
が最も重要な役割であり、
人間の原動力とも言える(P.70)
という。
そして、脳には新しい情報や新しい環境、出来事といったものを欲し、これに反応してドーパミンを産生する細胞がある。
(それは、新しい情報等の知識を得る事で行き伸びる可能性があがるためであり、食べ物の入手という永遠の課題に挑んできたため)
つまり、わかりやすく言えば
新しい情報を得ると脳は報酬をもらえる(P.72)
ということ。
そして、そんな風にしてきた人類に最も手軽に報酬をもたらすのが「スマートフォン」であり「SNS」というわけだ。
スマホに取りつかれそしてスマホで不幸になっている
また別の観点でこんな話がある。
スマホが本能を満たす
人類の歴史の99.9%を占める狩猟採集中心の生活下では、人類は50~150人程度の集団で暮らしてきた。
今では一匹オオカミでも生きていける時代になったかもしれないが、当時は生き延びるためにはそうはいかなかった。
そんな環境下で
人間の脳は悪い噂が大好き(P.130)
になり、
私たちは自分のことを話したい(P.135)
と思うように進化してきている。
それは生存競争の中で、誰が信頼できて、誰が信頼できないかが生死を分ける状況下で悪い情報が大きな意味を持ち、あるいは、集団生活の中で周囲と絆を強めたり他者と協力して何かをしたり必要があったためではないかと記されている。
本能的に求めてしまう悪い噂も自分語りも、スマホとSNSがあればしたい放題できてしまうことがスマホの依存性を強めているではないか。
SNSが比較対象を増やす
さらに「社会的地位」を理解することも非常に大きな意味を持つという。
ヒエラルキーの中で自分の居場所を確立することは必須だ。その居場所が私たちの気分に大きな影響を及ぼす。(P.142)
狩猟採集の時代ならいざ知らす、つい数十年前まで、自分の比較対象は数十人から多くても数百人だったが、今では世界中の人が比較対象となってしまった。
フェイスブックとTwitterのユーザーの3分の2が「自分なんかダメだ」と感じている(P.144)
それでもまだスマホに依存し続けるのか
これがうつ病などの増加と無関係と言えるのだろうか。
それでもスマホを際限なく使いつづけて問題ないと言えるだろうか。