最近読んだのが有栖川有栖氏の「海のある奈良に死す」。
これは有栖川有栖氏の有名な「作家アリス」シリーズの4作目。ちょうど今、この「作家アリス」シリーズを1作目から順番に読んで行っているのでせっかくだから書評というか、感想というか、そんなようなものを残しておこうと思った次第。1~3作目はまだ記録としては残していないので、また別の機会にしたためようと思っている。
当然ネタバレになるようなことを書くつもりは更更ないが、前情報無しに読みたい方は是非ともここでウィンドウを閉じて欲しい。
さて、今回の作品は4作目はこれまでの3作品とはだいぶ趣の異なる作品だったと思う。というのも、今回は事件の舞台だどこなのか、だいぶ読み進めないとはっきりしないうえに、西へ東へ行ったり来たりを繰り返す、というあまり見たことのない展開になっている。おそらく他に類をみない作品作りに挑戦しようとされたのではないかと思う。
それが作品として功を奏したのかどうかは読み手によって異なる印象を持つと思うが、私は悪くないと思った。これまでの3作に比べて今作が特別秀でているとは言えないかもしれないが、今作に限っていえば、謎めいた登場人物の演出が際立っていて、事件のトリックと同じかそれ以上に登場人物そのものが醸し出すミステリアスな雰囲気に魅せられた。
ミステリー小説において設定の細かな整合性はある程度大事だとは思うが、それ以上に大切なことは「これはいったいどういうことなんだ?」という不可思議感を読者が感じられることであり、それと同時に謎が解き明かされた時の解放感、納得感であると思っているのだが、これは十分にその感覚を満たしてくれた。
海のある奈良に死す/有栖川有栖
推薦度:☆☆☆☆☆☆☆★★★(7/10)