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【書評】No.1ストラテジストが教える 米国株投資の儲け方と発想法/菊地 正俊
No.1ストラテジストが教える 米国株投資の儲け方と発想法/菊地 正俊
株式市場に関する知識は、投資を行う時には勿論のこと、公認会計士としての業務にも役立つものがあるので今年は積極的に関連書籍を読み進めていこうと思っています。
そこで今回読んでみたのが、こちらの「No.1ストラテジストが教える 米国株投資の儲け方と発想法」です。
最近だとTwitter等のSNSで多くのフォローを抱えるインフルエンサーの書籍が目立つのですが、みずほ証券エクイティ調査部チーフ株式ストラテジストである菊地正俊氏が執筆した本をチョイスしました。
餅は餅屋ということで、その道のプロの書籍を読むことは基礎を学ぶ上で重要だと考えたからです。
実際読んでみると非常に勉強になることが多く書かれていました。
書籍タイトルには「儲け方」、「発想法」とあるのが誤解を招くように思いますが、「儲け方」「発想法」を自分自身で考えるための素材を提供してくれているイメージです。
実際に私が読んで印象に残ったところを中心にまとめてみたいと思います。
米国株の季節性
アメリカでは「Sell in May and Come Back in September」ということわざあるそうです(P.69)
過去の趨勢が未来にも同様に表れる保証はありませんが、相場の波に逆行しないためにも基本的な流れは抑えておきたいところです。
他にも
過去10年(2010~2019年)のニューヨークダウ、S&P500、ナスダック指数はいずれも5月と8月がマイナスのリターンになっています。過去10年に4月末に売って8月末に買う戦略をとると、3株価指数は11~13%になる一方、8月末に売って4月末に買う戦略をとると、ナスダック指数は平均プラス2%のリターンですが、他の2つの株価指数はマイナスのリターンになります。
といった過去のトレンドを知ることができます。
また、別の章では民主党の大統領の方が共和党の大統領よりも任期中の株価パフォーマンスが良いとされています(P.113)。
その理由については
共和党政権が行う減税や規制緩和などの政策の効果が、政権交代後の民主党政権で発現することや、大きな政府思考の民主党が政府支出を拡大して、景気がよくなることなどが理由と考えられます
とあります。
2021年にトランプ政権からバイデン政権へと移行しましたが、トランプ政権でも大きく上昇した米国株相場はバイデン政権下でさらなる上昇が起こるのかもしれません。
景気サイクルに先行する指数
S&P500は景気のピークに対して半年~1年先行することが多く、景気の谷に対しては3カ月~半年程度先行する傾向があるとあります(P.79)。
また、日本は戦後最長の景気回復局面は2002年から2008年まで73カ月続いた「いざなみ景気」が最長でしたが、アメリカの戦後最長の景気拡大はリーマンショック以後、コロナショックまで続いた128カ月が最長という、米国経済の強さを物語るデータもあります(P.78)。
バブルの要因
バブルの要因についもあります。
バブルは常に技術革新への期待と、大規模な金融緩和によって起こるそうです(P.90)。
まさに今(2021年1月)がその状況であることがわかります。
日本とアメリカの投資と企業の違い
アメリカには忍耐強い投資家が多いという記載があります(P.141)
これがとういうことかと言うと、
日本ではリーマンショック時などを除くと、当期純損失を計上した上場企業の割合が5%程度に留まる一方、米国では同比率が20~30%で推移しています
とあります。
アマゾンは1994年に創業した後2014年まで通期ではずっと赤字を計上し続けたことからも上記の傾向が垣間見えます。
米国企業の株主重視の経営
米国企業の株主重視の経営スタイルは半端ではないということが序盤で語られており(P.21)、その詳細が第5章にて詳しく記載されています。
これは非常にうなずけるところで、公認会計士としての業務を行う中でも感じるところです。
この第5章を一通り読むと、日本企業の経営の問題を強く認識できるとともに、米国株への投資が非常に魅力的にも感じられると思います。
EPS(1株当たり利益)が非常に重要視される点や役員報酬、配当や自社株買い、ガバナンス等幅広く記載されており、非常に勉強になるところです。
最後に
多くの人が投資によって老後やより良い人生、あるいは、家族のための資産形成を考えていると思いますが、資産を損なうことなくできる限り多くのリターンを得たいという思いは共通することだと思います。
日本人ですから日本株への投資は勿論良いことであり否定されるものではありませんが、日本より良いパフォーマンスを発揮してきた(そして今後も発揮するであろう)米国株投資も視野に入れている人も多いでしょう。
そんなこれから米国株投資を始めようと考えている人や、米国株投資を始めたけどよくわからないまま始めてしまった人に非常にオススメできる書籍だと思います。