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【書評】スマホ脳③
スマホ脳/Anders Hansen(アンデシュ・ハンセン)
今回も前回、前々回の続き。
https://cpa-second.com/screen-brain
前々回が、人間の進化のプロセス。
前回が、その進化の結果と現代の相性が決して良くはないことを確認した。
今回は、第7章から第10章が中心となる。
第1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた
第2章 ストレス、恐怖、うつには役目がある
第3章 スマホは私たちの最新のドラッグである
第4章 集中力こそ現代社会の貴重品
第5章 スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響
第6章 SNS-現代最強の「インフルエンサー」
第7章 バカになっていく子供たち
第8章 運動というスマートな対抗策
第9章 脳はスマホに適応するのか?
第10章 おわりに
スマホに依存しやすい子供たち
スマホには人間の報酬系を活性化させて注目を引くという、とてつもない力がある(P.173)。
衝動にブレーキをかける脳内の領域は、~略~子供や若者のうちは未発達であることが、デジタルなテクノロジーをさらに魅惑的なものにしてしまう(P.174)
大人でもスマホに依存してしまう人が大勢いるのに、(大人に比べて)未熟な子供たちの自主性にまかせてしまって問題がないと言えるだろうか。
また、子供は本を読んだり、絵をかいたり、パズルをするときに実物に触れることで指の運動能力を鍛えたり、形や材質の感覚を身に着けるが、スマホやタブレットではそうはいかない。
大人であれば、タブレットのパズルや本は実物と大きな違いがないかもしれないが、子供たちはそうではない。
手で実際にペンをもって文字を書くことは文字を読む能力とも深くかかわっていることが示されているし、タブレットやスマホを長時間使っている子供はのちに算数や理論科目を学ぶために必要な運動技能を習得できないと警告されているという。
そして、実際にスマホを制限することで成績があがったとする研究結果もあるそうだ。
100件以上の研究が行われ、その大半が明確にスマホの学習妨害を示唆している(P.184)
若者の睡眠時間が減っている
それに加え、
若者はどんどん眠れなくなっている(P.186)
そうだ。
この10年で不眠の問題は悪化しており、15~24歳で睡眠障害の診断を受けた若者の数は、2007年から5倍にも増えているそうだ。
そして若者の精神不調が急増しており、スマホの利用時間が長くなるほど「幸せではない」と感じているという。
運動で対抗する
こうした事態に対抗する術は「運動」が対抗策として最善の方法と言っても良いかもしれないと筆者は記している。
少しの運動でも効果的(P.206)
だし
すべての運動に効果がある(P.214)
ともしている。
さらに
脳の観点から見ると,心拍数は上げないよりは上げた方がいい(P.216)
そうだ。
できることをやって、心拍数が上がればなおよしというわけだ(P.216)
デジタル社会に適応するのか
3回にも分けて書評を書いてきたのは、進化のプロセスとその結果を理解した上で、現代社会をどう生きるべきかを考えるためだ。
では、これまで生き延びるために進化を遂げてきた人類は、デジタル社会に適合するように進化するのだろうか?
筆者は
私はそうは思わない(P.229)
と記している。
それは進化の基本が、生存や繁殖のためであり、それがなければ生き延びることも子孫を残すこともできない場合であって、デジタル社会に適合することとは違うからだという。
私たちはデジタルな道具を賢く使わなければならないし、それにはデメリットがあることも理解しておかなくてはいけない(P.238)
最後になる第10章ではこのデジタル社会で、デジタルな道具を賢く使いこなす具体策を提示してくれている。
方向性としては、これまで説明してきたとおりスマホやSNSの利用を一定程度制限し、運動をすることを推奨するものだが、詳細は是非本書で確認して欲しい。
最後に
これを読み終えた今、これから生まれてくるであろう子供たちに、どうやってスマホやSNS、インターネット等に触れさせていけば良いのだろうかと自問してみたが、まだうまく答えは出せていない。
当然ながら好きなだけ与えるわけにはいかないし、かといって全く与えないわけにもいかないだろう。
子供たちに理不尽だと感じさせる我慢はさせたくはないが、子供たちにその違いがわかるだろうか。
わかってもらえるように育てることはできるのだろうか。
あるいはこれからの人生で、自分がどれだけの目標を達成していくことができるのか。
その鍵を握るのは、1つにはスマホやSNSとのかかわり方が影響してくるだろうと思う。
簡単な問題では決してないし、明確な答えが用意されているものでもない。
だからこそ、真剣に向き合って考え続けていきたいと思う。