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【書評】リウーを待ちながら

【書評】リウーを待ちながら

リウーを待ちながら

偶然本屋で見かけた全3巻からなる「リウーを待ちながら」というマンガを読みました。

「リウー」とは、アルベール・カミュペストという小説に出てくる意志の名前で、この「リウーを待ちながら」はまぎれもなく「ペスト」を題材にした漫画となっています。

 

ペストという病

ペストと言われてピンとくる人はあまり多くないと思いますが、私もその一人でありまして、過去に猛威を奮った疫病、程度の知識しかありませんでした。

いや、今でもたいしてわかっていないのですが、これを読んだら誰しもペストについて調べようと思うはずです。

 

Wikipediaというのは大変親切なものでして、「感染症の歴史」というページがあり、そこにはマラリアやコレラ、天然痘や麻疹なんかと並んでペストの名前も刻まれています。

いずれも耳にしたことがある疫病ですが、ペストは治療が行われなかった場合には死亡率が60~90%と非常に高い病気です。

 

こういった感染症は現在の日本ではまるで馴染みがなく、あたかもすべてが根絶、あるいは、なんらかの対応策が確立されているようなイメージがありますが、これまで根絶できた感染症は天然痘しかなく、ペストは未だに世界のどこかしらで罹患している人がいることがわかります。

 

多剤耐性菌

マンガを一読し、wikipediaを簡単に見ただけの知識でしかありませんが、ペストの治療法の1つは抗生物質の投与によるそうですが、このマンガでは「多剤耐性」をもったペスト菌のアウトブレイクが発生します。「多剤耐性菌」は抗生物質等の多くが効かない菌のことを言うでそうです。そしてこれに対し、どのようにして人間が立ち向かうのかを描くストーリー展開となっています。

 

これはコロナ前に描かれた作品ですが、コロナ前に読んでいたら空想上のお話としかとらえることができなかったであろう物語です。

しかし、今読むとこの1年間の出来事とダブる部分が多く、良くも悪くも非常にリアリティをもって読み進めることができました。

 

つい先日、東日本大震災から10年が経ったばかりで、あの震災で刻まれた恐怖の大きさを改めて感じたばかりですが、感染症の恐怖はそれともまた違うスケールで、新たに心の中に何かを刻んでいったように思います。

 

世の中にはどうにもならないこともある

悲観的になりすぎるのは良くないけれど、楽観的になりすぎてはいけないと、何かが起きたときにそれに対し自分がどのように向き合い、対応していくのか、ということを考えさせられたように思います。

 

このマンガの1巻が発売されたのは2017年の6月だそうです。

これをコロナが大流行する3年前に書き上げた作者は、何かが起きる前触れのようなものを感じていたのでしょうか。

 

これまでにも近年SARSやMERS、エボラ出血熱などの世界のどこかでは感染症がアウトブレイクし、そういった情報は日本でも報道されていたのにも関わらず、ここまで無関心で来れた自分に驚くとともに、無知でいることの罪深さを思い知りました。

 

このマンガを読むことで何がどうかわるのか、具体的なことはわかりません。

だけど、読前と読後では確実に何かが変わりました。

それは、世の中にはどうにもならないことがある、という残酷さに対する悟りだったり諦めだったりするような気もします。

だけど決して負の感情だけではない、というのもまた事実。

 

こんな世界線もあるのかと知ることだけでも大きな意味がある、そう感じる漫画。

まだまだコロナとの戦いは続いていくだろうし、これから今以上の混沌が降りかかるかもしれない、そんな今だからこそ一読の価値があるように思います。